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絵本

(画像は継松寺所蔵の「雪山童子図」曾我簫白画)

昔、雪山(ヒマラヤ)にひとりの苦行外道がいた。

彼は雪山童子と呼ばれた求道者で、衆生利益のために、自分を犠牲にして顧みず、種々の苦行を修めていた。


しかし、帝釈天(たいしゃくてん)は、そんな雪山童子の法を求める態度に疑問を持っていた。


悟りを開こうとする者は多いが、ほとんどの求道者は、わずかな困難に出会うと、たちどころに退転してしまう。


多くの者は、鎧や杖で身を固め、物々しいいでたちで、賊の討伐に向かうけれど、いよいよ敵陣に望むと、恐怖に駆られて退却する。


同様に、悟りを開こうと固い決意をした人も、生死の魔軍に出会えば、求道の心を失う。

雪山童子の苦行は本物なのだろうか。


車に車輪がふたつあれば、運搬の用に立つ。

鳥に双翼があれば、空を飛べる。


同様に、修行者も、戒を保つだけでなく、正真の智慧がなければ、悟りに到ることはない。


はたして、雪山童子が、修行を完成できるだけの人物であるかどうか、試してみよう。


そう思った帝釈天は、みるも恐ろしい羅刹(らせつ=鬼)に姿を変えると、天上から雪山へ下ってきた。


雪山童子の間近までやってきて、立ち止まると、過去世の仏が説いた偈文(げもん=詩句)の半分を、声高らかに唱えた。

諸行無常(しょぎょうはむじょうなり)
是生滅法(これしょうめつのほうなり)


羅刹は、偈文の半分を唱え終わると、四方を見回した。


これを聞いた雪山童子は、大いに喜んだ。

それは、まるで、深山に伴とはぐれた旅人が、恐怖とともに闇夜を彷徨ったあげくに、再び伴と出会ったような思いだった。


喉の渇いた人が、冷水に出会ったようでもあり、長く病床にある人が、名医に逢ったようでもあり、海に溺れた人が船に出会ったようでもあった。


雪山童子は、辺りを見渡したが、恐ろしい羅刹以外は、誰もいなかった。

よもやとは思ったが、童子は、羅刹に訊ねた。


大士よ、あなたはどこで、この仏の説いた偈文を聞いたのでしょう。


その偈文は、過去現在未来の三世に渡る仏の教え、真実の道です。


世間の人間さえ、ほとんど、知ることのない教えです。どこで、その偈文を聞いたのですか。


出家者よ、そんなことを聞いても無駄だ。


私は、もう、幾日も食べ物が手に入らないので、飢えと乾きで心が乱れて、でたらめを言ったのだ。


大士よ、もし、残りの偈文を説いてくれるならば、私は、終生、あなたの弟子になります。

先ほどの偈文だけでは、字句も不完全だし、義も尽きてはいません。

どうか、残りの偈文を教えて下さい。

出家者よ、私は、飢え、疲れているから、説くことができないのだ。

大士よ、あなたは何を食べるのですか。

私の食べ物は、人肉だ。

飲み物は、人の生き血だ。


大士よ、話は分かりました。のこりの偈文を聞くことができたら、私は、この肉体をあなたに差し上げましょう。


たとえ天寿を全うしても、どうせ、私の死体は、獣か鳥に食われるだけです。


しかも、食われたからといって、何の報いがあるわけでもありません。


それならば、悟りの道を求めるために、この身を捨てる方がよいでしょう。


では何か。

わずかな偈文のために、肉体を捨てようと言うのか。

しかし、そうはいっても、誰も信じないだろう。


あなたは無智ですね。

瓦の器を捨てて、七宝を得ることができるなら、誰でも喜んで瓦を捨てるでしょう。


お前が本当にその身を捨てるというなら、残りの偈文を説いてやろう。


雪山童子は、羅刹の言葉を聞いて、身につけていた鹿皮を脱いで、羅刹のために法座を設け、大士よ、どうかここにお座り下さい。


というと、合掌してひざまづいて、一心に残りの偈文を求めた。

羅刹は、厳かに残りの偈文を説いた。


生滅滅已(しょうめつめっしおわりて)
寂滅為楽(じゃくめつをらくとなす)


こう説いてから、羅刹は、約束通り、雪山童子の肉体を求めた。


出家者よ、お前は、すでに、偈のすべてを聞いた。

願いはかなえられたのだから、約束通り、私に肉体を施してくれ。

雪山童子は、覚悟の上のことだから、肉体を捨てることに何のためらいもなかった。


しかし、このまま死んでしまっては、他の人々のためにならない。


そこで、辺りの石や、壁、道や樹木に、手当たり次第に、この偈文を書き留めてから、死後に身体の露出することを懼れて、衣服を整えると、高い木に登った。


そして、羅刹との約束を守って、地上へと身を投げた。

ところが、雪山童子の身体が、まだ地上に落ちないうちに、羅刹は帝釈天の姿に還り、空中で童子の身体を受け止めると、地上に置いた。


時に帝釈天をはじめ、諸天の人々は足下にひれ伏して、童子にこう言った。


あなた様は、無量の衆生を利益して、無明の闇の中に、大法の炬(たいまつ)を燃やそうとする以外には、何も求めようとはしない。


あなた様こそは、真の菩薩です。


あなた様を苦しめたのも、ただただ、仏の大法を愛すればこそです。


どうか私の懺悔をお聞き届け下さいまして、未来に悟りを得られた暁には、お救い下さいますようお願い致します。


半偈のために身を捨てた苦行外道の雪山童子は、後の世の、お釈迦様である。


また、この物語にちなんで、「諸行無常 是生滅法 生滅滅已 寂滅為楽」を、雪山偈と呼び慣わしている。



以上、子供の絵本(雪山童子 せっせんどうじ)より。


生存証明



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